ECU制御システムのトラブルシューティングの方法  新ダイアグシステム



  1. 本書に記載しているトラブルシュート手順はダイアグコード出力時の診断手順と不具合症状発生時の診断手順の2つの構成より成り立っている。それぞれの手順の考え方は以下の通りである。


    診断内容
    診断手順の考え方
    ダイアグコードの診断
    現時点で当該ダイアグコードが出力している場合の診断手順を記載
    当該ダイアグコードの出力条件を単体点検や診断機器を使用して、消去法により不具合部位を特定
    不具合症状別の診断
    何もダイアグコードは出力されていないが、現時点で当該不具合症状が発生している場合の診断手順を記載
    ダイアグコードが出力する条件を除いた、当該不具合症状の発生原因を単体点検や診断機器を使用して、消去法により不具合部位を特定
  2. 昨今の車両搭載システムの高度化·複雑化により単体点検が困難なコンピューターが多数あるため、診断手順の中では単体点検ができる部分を点検し、最後まで単体点検で何も不具合が見つからなかった場合にはその症状を起因とするコンピューターを要因と特定するいわば[消去法]を診断手順の考え方に取り入れている。
  3. したがって、現在も不具合症状が継続して発生していない状況で、本書通りの診断手順に従って点検を行っても、何も不具合が発見されずコンピューター交換に行き着いてしまい、場合によってはそれでも不具合が解消されないケースがある。
  4. よって、お客様の申し出(不具合症例)を良く聴き、その不具合を再現·確認した上で診断を開始することが最も重要である。
  5. また、本書では診断手順を無限に広げないため、重複故障(2箇所以上の不具合)が一つの不具合症状の中に発生していないことを前提に組み立ててある。
  6. 本書では、ユニットやECU、ワイヤハーネス等の不具合部品の切り分けを記載 している。
  7. 診断の結果ワイヤハーネスに不具合がある場合には、ユニットとECU等の接続部だけではなく、 ワイヤハーネスの途中で接続されている中間コネクターの点検も実施する必要が ある。



  1. 概要
    D102496J03
    1. 新ダイアグシステムとは、高度化·複雑化する車載エレクトロニクスシステムに対応した新しい故障診断システムである。この故障診断システムの機能は、診断ツールTaSCANにより活用できる。



    1. 診断ツールTaSCANの機能
      1. この新ダイアグに対応した診断ツールTaSCANには、下表に示す機能がある。

        機 能
        概 要
        診断
        車両診断
        ALLダイアグ
        CANバス診断
        システム診断
        ダイアグコード フリーズデータ
        ECUデータモニター
        アクティブテスト
        モード移行
        ダイアグ判定結果の確認
        作動時のフリーズデータ
        テストモード点検
        基本点検
        特殊操作/制御履歴
        マルチデータモニタ
        電子キーまたはワイヤレスダイアグモード
        キー登録·消去
        ワイヤレスキー等の登録·消去
        作業サポート
        ECUやアクチュエータ交換時に必要な作業サポート機能
        保存データ
        保存データの再生·削除機能
        カスタマイズ
        ユーザーの要望にあわせたカスタマイズ項目の設定値確認·変更機能
        計測
        電圧計測およびオシロスコープ機能を搭載



      1. ダイアグ通信対応コンピューター·センサー

        コンピュータ·センサ名
        ダイアグコード読み取り
        (ノーマルモード)
        ダイアグコード読み取り
        (チェックモード/テストモード)
        フリーズフレームデータ読み取り
        (故障発生時のコンピュータデータ)
        モニターデータのリアルタイム読み取りおよび保存/表示
        アクティブテスト
        TaSCANとの通信線
        エンジンECU(トランスミッションECU)
        ○
        ○
        ○
        (*1)
        ○
        ○
        SIL
        スキッドコントロールECU
        ○
        ○
        ○
        (*注)
        ○
        ○
        SIL
        エアバッグECU
        ○
        ○
        -
        -
        -
        SIL

        (*1)
        時系列フリーズデータも読み取り可能

        注
        システム作動時のフリーズデータも読み取り可能




        1. 診断ツールTaSCANの使用方法
          D102833J01
          1. 車両との接続


            1. 運転席足元付近に設置のDLC3(データリンクコネクターNo.3)に接続する。



            D031282J01
          2. 診断ツールTaSCANの使用方法


            1. 診断ツールTaSCANの電源スイッチをONにすると、メニュー画面が表示される。

            2. 実施したい項目を任意に選択し、それ以降は、画面と対話をしながら作業を進める。




          1. 時系列フリーズデータ(TaSCAN使用時)
            A103809J01

            □ 参 考 □
            1. 時系列フリーズデータでは、ダイアグコード検出ポイントおよびその前後のデータをフリーズする。フリーズされたデータによって、車両の走行状態(加速、減速、定常走行時、変速状態)やドライバーの操作状況を正確に確認でき、トラブルシュートする際に役立つ。また、再現テスト実施時のデータとして活用することができる。
            2. 入力信号の変化を確認することにより、瞬断などの異常も検出できる。
            3. DTC検出ポイントは、図のポイント3、4間で条件により変動する。 TaSCANをDLC3に接続する

            1. TaSCANをDLC3に接続する。

            2. IG ONにする



            3. [診断]→[フリーズデータ]画面を表示し、データの項目を選択する。


              D031291J01

            4. 項目選択後、各ポイントのデータを確認する。




            1. ダイアグノーシスコネクターについて
              D100010J52
              1. 新ダイアグシステム採用に伴い、DLC3(運転席足元付近に設置)に機能を集約した。

              2. DLC3の端子名称と機能
                端子名称
                機能
                BAT
                バッテリー電源
                WFSE
                ECUプログラム書き換え
                TC
                ダイアグコード(ランプ)出力指示
                TAC
                エンジン回転数出力
                SIL
                各コンピューターとのダイアグ通信
                CG
                ボデーアース




              1. エラー発生時の処置について
                D031284J11

                ■ 注 意 ■
                TaSCANの電源インジケーターが点灯しない場合、またはメニュー表示時にダイアグ通信すべてのシステム名を表示しない場合は、以下の点検を行い、故障箇所を修正する必要がある。



                  D100010J52
                1. TaSCANの電源インジケーター不灯


                  1. 他の車両にTaSCANを接続し、TaSCANを起動する。
                    作動状態
                    不具合箇所
                    点検箇所
                    TaSCANの電源インジケーターが赤または緑に点灯する場合
                    車両側
                    1. DLC3 BAT端子の電圧点検
                    2. DLC3 CG端子←→ボデーアース間の導通点検
                    TaSCANの電源インジケーターが点灯しない場合
                    TaSCAN本体
                    -



                  D032336J01
                2. 診断メニューでシステム診断を押した時に、ダイアグ通信すべてのシステム名を表示しない。


                  1. IGスイッチおよびTaSCANの電源スイッチを一度OFFし、再度TaSCANを起動し[戻る]キーを押して診断メニュー表示させた時の状態を確認。
                    作動状態
                    不具合箇所
                    点検箇所
                    すべてのシステム名を表示しない
                    TaSCAN本体
                    -
                    ダイアグ通信対応のシステム名を表示しない
                    車両側
                    1. DLC3の通信ラインSIL端子とジャンクション間の導通点検
                    2. DLC3の通信ラインSIL端子とジャンクション間の+B、アースとの短絡
                    ダイアグCAN通信対応のシステム名を表示しない
                    車両側
                    制御系CAN通信トラブルシューティングの進め方手順5[DLC3点検(CANH-CANL)]以降の手順でCAN通信の修正を実施
                    ダイアグ通信対応の一つのシステム名を表示しない
                    車両側
                    1. 非表示ECUのDLC3の通信ラインSIL端子とジャンクション間の導通点検
                    2. 非表示ECUのDLC3の通信ラインSIL端子とジャンクション間の+B、アースとの短絡
                    3. 非表示ECU+B、アース点検
                    4. 非表示ECU交換
                    ダイアグCAN通信対応の一つのシステム名を表示しない
                    車両側
                    制御系CAN通信トラブルシューティングの進め方手順3[ダイアグコード確認]以降の手順でCAN通信の修正を実施